今回の検討に用いる血管新生抑制物質であるエンドスタチンとKringle1-5が実際に内皮細胞の増殖を選択的に抑制するか否かを検討するために、エンドスタチンのcDNAとKringle1-5のcDNAをpcDNA3.1ベクターに組み込み、293細胞にtransformし、その培養液をウシ肺の内皮細胞株であるBCEに添加し増殖抑制効果を検討した。その結果、エンドスタチンもKringle1-5も約30%の増殖抑制効果を示した。一方、肝癌細胞株に対しては全く増殖抑制効果を示さなかった。 次に、嫌気性菌であるBifidobacterium longumの発現ベクターであるpBR322に血管新生抑制物質であるエンドスタチンのcDNAを組み込み、シークエンサーでその塩基配列を確認した。次に、エレクトロポレーション法にてこのベクターをBifidobacterium longumにTransformした。このBifidobacterium longumをアネロバックで嫌気性にした容器の中で乳酸菌培養用のMRS培地で培養し、その菌体を採取した後蛋白を採取するためLysis B bufferにメルカプトエタノールとウレアを加えた溶液を作成し、これを菌体に加えた後ボルテックスミキサーにて溶菌させ菌体のタンパク質を採取した。この採取したタンパク質をSDSで電気泳動した後抗エンドスタチン抗体を用いてウエスタンブロットを行い、Bifidobacterium longumによるエンドスタチンの産生を確認した。一方、Bifidobacterium longumを培養したMRS培地も同様に抗エンドスタチン抗体を用いてウエスタンブロットを行ったがエンドスタチンの分子量に一致したバンドは検出されなかった。このことからBifidobacterium longumはエンドスタチンを産生することはできたも菌体外に分泌することが出来ないことが明らかとなった。このため次に、乳酸菌(ラクトバチルス デルブリュッキ)で菌体外に蛋白を分泌させることが可能なベクターであるpSECE1にたいしエンドスタチンのcDNAと同様の血管新生抑制物質であるKringle1-5のcDNAを組み込む実験を行っているところである。
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