研究概要 |
心筋細胞や血管平滑筋細胞、血管内皮細胞には種々のTRPチャネル(transient receptor potential ; Ca流入チャネル)が存在することが知られているが、その心血管病態における役割については未だ不明な点が多い。本年度私はTRPチャネルスーパーファミリーに属するTRPV4チャネルに着目し、anandamide,2-AG,アラキドン酸らがその内因性アゴニストであることを発見した。それら内因性アゴニストはcytochrome P450 epoxygenaseの作用によりepoxyeicosatrienoic acids (EETs)に代謝され、その産生されたEETsが直接TRPV4チャネルに結合することによりチャネルを開き、その結果血管内皮細胞にCa流入を引き起こすことが明らかとなった。これまでanandamide,2-AG, EETsは血管拡張性物質として知られており、その作用は血管周囲神経末端への作用や血管平滑筋のCa-activated K channelの活性化によるとされてきたが、本研究結果はそれらの作用以外にもTRPV4チャネルを介した内皮依存性血管拡張反応があることを示した。さらに細胞内Ca流入は血管収縮、拡張反応のみならず平滑筋細胞増殖や心筋細胞肥大に重要な現象と考えられていることから、来年度はTRPチャネルと血管リモデリング、心筋細胞肥大との関連性を検討する目的で現在研究は進行している。また本年度はそのほかにTRPV4チャネルの構造と機能の関連性についても研究を行い、そのチャネル不活性化に6番目膜貫通部位のアミノ酸(F707)や細胞内C末端のアミノ酸(E797)が重要な役割を担っていることや、細胞内外のCaイオンがチャネルの不活性過程に影響を及ぼし、チャネル機能を修飾することを明らかにした。
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