研究概要 |
平成15年度科学研究費補助金の交付内定後、268例の(ラクナ梗塞を除く)急性脳梗塞症例に対し経食道造影超音波法が施行され、超音波造影剤レボビストの経静脈的投与により、大動脈弓部の血流動態が視覚的に評価された。70例(26%)において、(拡張末期から収縮早期にかけて血管内を占めるような)巨大な逆行性渦血流が確認された。渦血流が確認された70例中49例(70%)は、心原性/アテローム血栓性脳梗塞が否定されcryptogenic subtypeと診断された。高度渦血流群は渦血流を認めない群に比べ、弓部の内中膜複合体(IMT)とstiffness parameter β、血中の総コレステロール値とLDLコレステロール値が有意に上昇していた(IMT 3.6±1.0 vs. 2.0±0.6mm;β 13.4±4.4 vs. 9.3±2.0;TC 192±40 vs. 163±37mg/dl;LDLc 128±31 vs. 94±32mg/dl,P<0.05)。さらに可動性プラークを有する6例は、全例において高度渦血流の合併が確認された。高度渦血流を認めた70例中、同意の得られた33例に対してワーファリン投与(INR2.0-3.0)が開始された。発症3週間後のフォローアップ時に29例(88%)において渦血流の消失が確認された。大動脈弓部に一過性に発生する高度渦血流の存在は、塞栓源の特定が困難な脳梗塞症例における独立した発症規定要因である可能性が始めて示唆された。 造影時の大動脈弓部内腔(プラーク近傍)における超音波後方散乱信号値の周期性変動量は、高度渦血流群が渦血流のない群に比し有意に高値であった(22.5±2.2 vs. 15.4±1.7dB,p<0.001)。我々が発見した渦血流(大動脈弓部血流動態異常)は、超音波後方散乱信号指標を用いて定量評価も可能であることが明らかになった。 以上の結果は2004年11月に行われたAmerican Heart Association(New Orleans)と2005年3月に行われた日本循環器学会(横浜)において口答発表された。近日中に論文発表される予定である。
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