1:心筋症動物モデルの作成 アドリアマイシン(ADR)腹腔内投与にて心筋症ラットを作成した。ADR投与終了後より一時的な体重減少や食欲不振をきたしたが、その後は徐々に胸腹水の貯留による体重増加をきたし、心不全状態となった。投与後3週後と6週後の生存率は、それぞれ約80%と60%であった。 2:心機能測定 ADR投与終了後、3週後、6週後の心臓超音波検査法により算出した左室駆出分画は、それぞれ84%、81%、72%で6週後に有意に低下していた。左室拡張末期容積の拡大も6週後には有意なものとなった。 3:心筋脂肪酸代謝測定 心筋へのBMIPPの取り込みは、ADR投与終了後を100%とした場合、3週後には87%とやや低下するものの有意ではなく、6週後に69%と有意に集積低下を示した。 4:ミトコンドリア複合体I活性測定 心筋のミトコンドリア複合体I活性は、ADR投与終了後にコントロールに比してやや低値を示し、3週後の時点ですでに有意な低下を示した。しかも、この低下は一時的なものではなく、6週後まで持続してみられた。 5:心筋Cu-ATSMイメージング 小動物PETを使用した生体イメージングによるミトコンドリア機能評価の遂行にむけて準備中である。 以上の本年度の検討から、ADRによる心障害の早期評価は、心機能や代謝によっても困難であることが推察され、ミトコンドリア機能の評価がその検出に非常に有用である可能性が強く示唆された。次年度におこなうCu-ATSMを用いた生体イメージングの基礎実験にてこの部分が明らかにできるものと考えている。
|