研究概要 |
今回の研究の目的は、虚血再灌流心筋障害におけるα(1B)アドレナリン受容体の関与について、特にPreconditioningとの関連について検討することであった。 当初はα(1B)アドレナリン受容体ノックアウトマウスを使用してこの視点で検討を行う予定であったが、これまでに行った実験ではこのマゥス摘出灌流心にてはPreconditioning効果が出にくく比較検討できずに、ラット摘出灌流心にて実験を行った。 今回の実験では長時間虚血前の短時間反復虚血によるPreconditioningにより虚血再灌流後の心機能の改善(左室収縮圧保持及び左室拡張末期圧上昇抑制)が確認され、さらに虚血中の細胞内pH低下、細胞内Na上昇、細胞内Caの上昇が抑制され、これがPreconditioningの効果と考えられた。また再灌流後の細胞内Caについても、Preconditioning群にて上昇を抑制し、良好なカルシウムトランジエントを保持するを確認した。さらにα受容体刺激薬とα受容体阻害薬による前処置により、この心機能改善作用や細胞内イオン動態がどのように変化するかにつき検討を行い、α(特に1B)アドレナリン受容体がPreconditioningに関与している事についても確認をする事ができた。今後もマウスα(1B)アドレナリン受容体ノックアウトモデルを使用した実験系でのこのPreconditioningに対する効果についても引き続き継続して検討を行って行く予定である。 なお研究結果については、【Ischemic Preconditioning attenuates the increase in [H+]i,[Ca2+]i, and[Na+]i during prolonged ischemia in isolated rat hearts】としてMol Cell Biochemに投稿予定であり、現在論文を作成中である。
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