研究概要 |
心筋の興奮収縮連関へのCa/カルモデュリン依存性蛋白キナーゼ(CaMKII)の関与を検討する目的で,まずラット心室筋におけるL型Ca電流に対するCaMKIIの役割を検討した.成人ラットからコラゲナーゼ法を用いて心室筋を単離した.アンフォテリシンBを用いた穿孔パッチクランプ法にて,L型Ca電流を測定した.最終的ににシリーズ抵抗は10MΩ以下と良好なアクセス下で測定を行った.電極内液のKを全てCsに置換してK電流を抑制し,支持電位を-40mVにすることによりNa電流を不活化した.L型Ca電流を完全に回復させるため,10秒毎にコマンドを与えて測定した.まず,CaMKII阻害薬であるKN-93およびautocamtide2-related inhibitory peptide (AIP)のL型Ca電流に対する効果を検討した.0.5μmol/LのKN-93および10μmol/LのAIPはL型Ca電流を抑制した.この事から,CaMKIIが生理的条件下でL型Ca電流を調節している事が明らかになった.次に,カテコラミンα受容体刺激時のL型Ca電流の反応およびCaMKIIによる調節について,検討をおこなった.βブロッカー(1μmol/Lブプラノロール)存在下で10μmol/Lフェニレフリンを投与するとL型Ca電流は一過性に減少した後,持続性に上昇した.この効果はα1受容体の非特異的阻害薬であるプラゾシンで完全に抑制された.CaMKIIの阻害薬であるKN-93やAIP存在下では,上昇相がおさえられ,L型Ca電流は持続性に減少した.しかし,KN-93の不活化型アナログであるKN-92存在下ではフェニレフリンの2相性の効果は観察された.以上より,フェニレフリンによりα1受容体刺激はCaMKIIの活性化を介してL型Ca電流を増大させる事が明らかになった.
|