研究概要 |
(1)大動脈嚢胞状中膜変性病変についての検討 大動脈瘤や血管解離病変における嚢胞状中膜変性は,マルファン症候群に特徴的とされているが,同様な所見を呈する例が非マルファン例でも認められる。またマルファン症候群はフィブリリン遺伝子(FBN1)異常に原因があると報告されている。マルファン症候群と非マルファン症候群での遺伝子変異を検討し,非マルファン例でのマルファン類似症例におけるFBN1変異の有無について検討した報告はない。現状では,大動脈瘤や解離病変に対する手術時に採取した病変部血管と,剖検時にみられた嚢胞状中膜変性を呈する血管等を用い,病理組織学的ならびに免疫組織学的に検討し,さらに遺伝子変異を調べている。大動脈疾患の発症の機序解明には必須の検討と考えられる。 (2)炎症性変化と動脈硬化との関連から 動脈硬化は炎症であるという報告から病変部血管での炎症性変化を検討している。TNF-α等の炎症性サイトカインやPPARγ等の発現について検討している。最終的には抗炎症作用をもつ薬剤の使用が病変部に対してどのような影響を及ぼすかについて報告する予定である。 (3)冠動脈内血栓についての検討 急性冠症候群ではプラークの破綻により,動脈硬化病巣の内容物が血管内に露出し,それに対して,二次的に血小板やフィブリンおよび白血球等が集積して,血管自身の完全閉塞をきたすことが知られるようになってきた。今回は急性期に冠動脈病変で採取された血栓内容を病理組織学的ならびに免疫組織学的に検討した。結果急性期血栓にはコレステリン結晶等の他に,多数の多形核白血球が含まれており,閉塞病変部の局所で非常に強い炎症が生じていることが明らかとなった(以上は,平成16年3月28日の日本循環器学会で発表)。動脈硬化病変と,炎症および血栓との関連については,今後も詳細に検討を続ける予定としている。
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