主に慢性喫煙暴露により惹起される慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、その発症メカニズムにおいて不明な点が多い。COPDは、最終的に肺のリモデリングとしての気腫化をきたす。これまでその病態を説明するものとして、主に気道や肺胞上皮細胞への障害をトリガーとしたプロテアーゼ・アンチプロテアーゼ仮説やオキシダント・アンチオキシダント仮説が考えられてきたが、肺毛細血管側(肺血管内皮細胞)からの病態の解明は十分になされていない。 Iodine-123-Metaiodobenzylguanidine(123I-MIBG)はノルエピネフリンの生体アナログである。肺は、ノルエピネフリンやセロトニンなどの生体アミンが肺循環に入ると、除去し、分解する働きをもつ(バイオジェニック・フィルター)。その生体アミンの除去の主要な部位が肺毛細血管内皮細胞である。ラジオアイソトープである123I-MIBGの血液から肺内皮細胞への取り込みもノルエピネフリンと同じ、Na依存性でcarrierを介した能動輸送による。したがって、123I-MIBGの肺循環での動態(取り込みや除去)は肺血管内皮機能を反映することが知られている。我々は本核種の性質を利用して、COPD患者に対して、123I-MIBG肺シンチグラフィーを用い、その肺内取り込み率や洗い出し率が患者群で健常者に比して有意に低下していることを証明した。さらに、洗い出し率が一秒率・肺拡散能・CTにおける低吸収領域・動脈血酸素分圧・肺胞気-動脈血酸素分圧較差などの臨床重症度のパラメーターと有意に相関することを証明し、その病態形成における肺血管内皮細胞障害の関与をIn Vivoにて明らかにした。
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