慢性咳嗽発生の機序について:炎症性メディエーター、神経ペプチドの検討

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15790410
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 松本 久子 京都大学, 医学研究科, 助手 (60359809)
• キーワード: 慢性咳嗽 / 炎症性メディエーター / 神経ペプチド / 咳喘息 / 咳感受性

研究概要

咳嗽は異物を排除するための防御機構の一つであるが、数ヶ月にわたる咳嗽は日常生活を障害し、患者が医療機関を受診する原因となる。胸部X線が正常な慢性咳嗽の原因疾患には、咳喘息、アトピー咳嗽、副鼻腔気管支症候群、胃食道逆流などがあるが、咳嗽を誘発する機序については、いずれの疾患においても未だ詳細は不明である。近年慢性咳嗽に気道炎症が関与するという知見が蓄積されてきていることから、本研究では慢性咳嗽の原因疾患を同定し、各疾患において気道分泌液中の炎症性メディエーター、神経ペプチドを測定し、咳嗽との関連を検討する。また治療への反応性との関連などの検討も行う。
慢性咳嗽の主な原因の一つである咳喘息において、喀痰中のPGE,PGF2α、TXB2濃度の測定を行い、喀痰中の炎症性メディエーター濃度と呼吸機能、カプサイシン吸入による咳閾値との関連を検討した。健常人26例と咳喘息36例において喀痰中の各メディエーターの濃度に差はなかった。また咳喘息においてFEV1と喀痰中の各メディエーターの濃度との間に有意な関連はみられなかったが、PGF2α濃度、TXB2濃度とC5(咳を5回以上誘発させたカプサイシンの最低濃度)との間に、有意な負の相関がみられた(PGF2α;r=0.43,p<0.02、TXB2;r=-0.40,p<0.04)。咳喘息における咳嗽には気管支拡張薬が有効であり、気道収縮が関与していると考えられるが、今回の検討から炎症性メディエーターが気道収縮を介さずに咳嗽を誘発しうる可能性が示唆された。喀痰中のサブスタンスP濃度、肥満細胞数についても検討を行っているが、現在のところ、健常人との差、病態との関連については明らかでない。今後他の疾患群での検討、治療への反応性との関連なども含め症例数を増やし検討を加える予定である。

研究成果

• [文献書誌] Niimi A, Matsumoto H, et al.: "Impaired cough reflex in patients with recurrent pneumonia"Thorax. 58(2). 152-153 (2003)
• [文献書誌] Matsumoto H, Niimi A, et al.: "Prognostic factors of cough variant asthma"Am J Respir Crif Care Med. 169. A637 (2004)
• [文献書誌] Matsumoto H, Niimi A, et al.: "Relationship of sputum MMP-9, TIMP-1 levels and their wolar ratis with airway wall thickness as assesed by compted tomography"Am J Respir Crit Care Med. 165. A812 (2002)
• [文献書誌] Niimi A, Matsumoto H, et al.: "Effect of short-term treatment with inhald corticosteroid on airway wall thickening in asthma"Am J Med. in press.
• [文献書誌] Takemura M, Niimi A, Minakuchi M, Matsumoto H, et al.: "Bronchial dilatation in asthma : relation to clinical and sputum indices."Chest. in press.
• [文献書誌] Niimi A, Matsumoto H, et al.: "Relation of airway wall thickness to airway sensitivity and airway reactivity in asthma"Am J Respir Crit Care Med. 168(8). 983-988 (2003)
• [文献書誌] 松本久子, 新実彰男: "喀痰検査."慢性咳嗽を診る"藤村 政樹編"医薬ジャーナル社. 34-41 (2002)