平成16年度の研究成果として以下のことが明らかになった。 1 肺癌患者血中にサイトケラチン8が出現するメカニズムを肺癌培養細胞株を用いた実験から明らかにした。サイトケラチン8は癌細胞がアポトーシスに陥った際に細胞外へ放出されるため、今後腫瘍マーカーであるとともにアポトーシスマーカーとして使用できる可能性が示唆できた。さらに、I型のサイトケラチンはアポトーシスにおいてはカスパーゼに切断されるが、II型のサイトケラチンであるサイトケラチン8はその多くがカスパーゼの影響を受けず全長型として細胞外に出現していた。またこれまで我々が肺癌患者血中で測定していたサイトケラチン8はこの全長型であることも明らかになった。これらの結果は現在海外の雑誌に論文として投稿中である。 2 サイトケラチン8は非小細胞肺癌に高発現しており、転移、浸潤能や薬剤耐性機序に関与している可能性が指摘されている。現在我々は、siRNAを用いて培養細胞中のサイトケラチン8分子をノックダウンすることにより、肺癌細胞の転移・浸潤能の変化を検討している。その結果、サイトケラチン8の遺伝子発現を抑制した肺癌細胞はマトリゲルアッセイ法で評価すると細胞の浸潤能が低下していた。逆にマトリゲル法を用いて強い浸潤能を与えられた癌細胞はサイトケラチン8の発現が減少していた。現在はこれらの実験結果をもとに、サイトケラチン8と共に細胞接着に関わる分子の変化を検討している。また、今後はマウスなどの動物実験によりこの結果を確認していく予定である。
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