研究概要 |
ブドウ等の果実に多く含まれるポリフェノールであるレスベラトロールに着目し、その抗腫瘍効果を肺癌細胞株(A549,EBC-1,Lu65)を用いて検討した。また肺癌治療の中心的薬剤であるパクリタキセルとの組合せも同時に検討した。液体培養においてレスベラトロールは5-10μMの濃度でいずれの細胞株も50%増殖抑制を示した。中でもEBC-1が最も抑制された。パクリタキセルもすぐれた抗腫瘍効果を示したがレスベラトロールとの同時投与では相加効果は得られなかった。ところがレスベラトロール(10μM)を加えあらかじめ3日間培養したのちパクリタキセルに曝露させるとパクリタキセル単独投与よりも増殖が抑制された。作用機序を検討する目的でアポトーシスの誘導を形態、フローサイトメトリー、TUNEL法、Caspase-3アッセイにて検討した。レスベラトロール(10μM)、パクリタキセル(10nM)、両者を投与したところ、これらのアッセイにおいてEBC-1とLu65細胞では有意な差をもってアポトーシスを証明できたがA549では証明できなかった。アポトーシスにおいても、レスベラトロールとパクリタキセルの同時投与では相加効果は得られなかったが、レスベラトロール(10μM)を加えあらかじめ培養した細胞ではパクリタキセルによるアポトーシスの誘導が同時投与よりも有意に増加した。Western blot解析ではp21の発現の増加が見られた。これらのことからレスベラトロールの作用機序としてアポトーシスの誘導や細胞周期蛋白への影響が重要であると思われたが、A549細胞の例からそれ以外にもあると思われた。また抗癌剤の増感剤としての臨床応用の可能性も示唆された。ここまでの結果をまとめて報告した。
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