【目的】これまでにToll-like receptor 4(TLR4)遺伝子変異を有するマウスで、グラム陰性桿菌の細胞膜成分である大腸菌エンドトキシン(LPS)急性肺損傷が減弱することを報告した。今回、グラム陽性球菌である黄色ブドウ球菌由来のペプチドグリカン(PGN)を気道内に投与し、その後の炎症機転、肺内シグナル伝達にTLR4遺伝子変異が及ぼす影響を比較検討した。 【方法】TLR4遺伝子変異を有するマウスC3H/HeJ(J)と野生型のC3H/HeN(N)を用い、LPS(100μg)またはPGN(30μg)を気管内投与した。6時間後に気管支肺胞洗浄(BAL)を施行した。BAL液中の総細胞数、好中球分画を測定し、また上清中のKC、CXCL10などの各種ケモカイン濃度をELISA法で測定した。また気管内投与3時間後に摘出した肺から核蛋白を抽出し、ゲルシフトアッセイ法によりNF-κB、STATの活性化を評価した。 【結果】LPS投与後にNではBAL液中の総細胞数、好中球分画の有意な増加が見られたが、JではNと比較して有意に減少していた。PGN投与後にはBAL液中の総細胞数、好中球分画の有意な増加が見られ、両系統の間に差はなかった。またBAL液中のCXCL10はNにLPSを投与した場合にのみ、著明に上昇した。KCについても、LPS投与後JはNと比較して低値を示した。LPS投与後のNF-κBの活性はNで有意に上昇したが、JではNと比較して有意に抑制されていた。PGN投与後のNF-κB活性化には両系統で差がなかった。STATはLPS、PGNの投与後に活性化されたが、マウスの系統による差はなかった。 【結論】TLR4遺伝子変異によりLPS投与後の肺内シグナル伝達が抑制されたが、PGNへの反応には差がなかった。菌体成分への生体反応の差にCXCL10などのケモカインが関与している可能性が示唆された。
|