研究概要 |
アスピリン添加によるアスピリン喘息患者の末梢血好酸球CD11b発現増強について検討を行った。 まずアスピリン患者(AIA)8名(男性4名,女性4名、平均年齢42.9±10.1歳)と非アスピリン患者(非AIA)8名(男性3名,女性5名、平均年齢41.3±16.0歳)を対象にして、未梢血より多核白血球を分離し、2×10^6個/mlにPBSにて調整した。10^<-4>〜10^<-7>Mの濃度のアスピリンを調整した多核白血球分離液に添加し、37℃にて培養後、FITCでラベルしたCD11bモノクローナル抗体およびPEで染色したCD16モノクローナル抗体を添加し、ブローサイトメトリーを用いて好酸球および好中球におけるCD11bの発現程度を検討した。 その結果、好酸球のCD11bの発現は、アスピリン10^<-7>M添加にて、非AIA群-5.7±3.2%、AIA群6.1±3.1%(p<0.05)、10^<-6>Mで非AIA群-3.5±2.2%、AlA群9.9±3.1%(P<0.05)、10^<-5>で非AIA群-1.2±2.2%、AIA群7.3±3.1%(p=0.07)、10^<-4>Mで非AIA群-8.0±2.6%、AIA群7.7±2.8%(p<0.05)であった。いずれのアスピリン濃度でもAIA群では増加し、逆に非AIA群では減少し、両群間に有意な差または傾向を認めた。好中球に関してはアスピリン10^<-4>M添加の場合のみ、非AIA群-8.9±3.5%、AIA群3.4±3.3%(p<0.05)と有意な差を認めた。以上の結果より、アスピリン添加によりAIA患者の好酸球にて有意なCD11bの増加が認められ、特にアスピリン10^<-4>M添加にてAIAと非AIAのCD11b発現差が顕著であった。 この結果を踏まえて、次に末梢血好酸球に対するアスピリン10^<-4>M添加によるCD11b発現増強効果を用いたAIA診断の感度および特異度の検討を行った。AIA患者20名(男性9名、女性10名、平均51.1±4.8歳)と非AIA患者19名(男性9名、女性10名、平均49.4±4.8歳)において、上記と同様の方法にてアスピリン10^<-4>M添加によるCD11b発現増強効果を検討した。 その結果、アスピリン10^<-4>M添加時の好酸球のCD11bの発現は、AIAでは20例中19例において増加し、逆に非AIAでは19例中18例において減少した。このCD11bの増加率0%を基準として、陽性をAIAとした場合、感度は95.0%、特異度は94.7%と診断法として非常に有用な方法であると思われた。 今後、症例数を増やして更なる検討と、より簡便な方法の確立を検討する必要があると考えられた。
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