研究概要 |
1.胎児後腎組織を用いた腎臓構成細胞への分化の確認 胎児後腎組織は、器官培養すると、糸球体、尿細管が経時的に発達し、その過程では腎臓構成細胞への分化を促す微小環境が形成されていると考えられる。そこで、腎組織への分化能の確認のため、6週齢ルイスラットの大腿骨と下腿骨からFicollで得られた骨髄単核細胞を蛍光色素CM-Dilでラベルし、妊娠14日目のLewis ratから採取した胎児後腎組織と共培養し観察した。ラベルされた細胞が腎臓にとりこまれているか否か、confocal microscopyを用いて評価したところ、骨髄単核細胞が後腎組織内で何らかの管状構造とみられる塊状となることが観察された。このことから、培養した骨髄単核細胞の中に、後腎組織内に遊走し胎児の構造物と連続性をもつ細胞集団が存在することが示唆された。 2.内皮前駆細胞へ分化誘導した骨髄単核細胞のThy-1腎炎モデルへの投与 6適齢ルイスラットから採取した骨髄単核細胞を、VEGF, basic FGFなどの内皮の成長因子存在下で培養した。培養骨髄細胞は、acetylated LDLを取り込み、Bandeiraea simplicifolia lectin陽性であり、いずれも内皮前駆細胞に観察される所見であった。 ルイスラットに抗Thy-1抗体(Mo Abs 1-22-3)を経静脈投与し、Thy-1抗体腎炎を作成し、培養骨髄細胞投与の内皮障害に対する効果を調べた。抗体投与1日後に左腎動脈内に蛍光色素CM-DiIでラベルした培養骨髄細胞を注入し、7日後にラットをsacrificeし、左右の腎臓の変化を比較した。糸球体内皮は、正常ラットに対し、thy-1腎炎群の未治療側(右腎)では減少がみられたが、thy-1腎炎群の細胞治療側(左腎)は内皮が保たれる傾向がみられた。現在、定量的な解析および詳細な組織学的な解析を進めている。
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