昨年度までの研究で、骨髄単核細胞を内皮増殖因子存在下で培養すると、内皮前駆細胞が得られることが明らかになった。さらに、腎炎を引き起こしたラットの腎動脈から得られた前駆細胞を投与すると、腎炎に伴う内皮障害、増殖反応、炎症を抑制できることを明らかにした。しかしながら、投与した細胞が腎臓内で生着する率が低いことが問題点として残った。 さらに、臨床上、血管新生細胞療法は下肢虚血を中心に施行されているが、無効である症例が経験される。また、流血中の内皮前駆細胞の数と機能が、心血管リスクファクターを有する患者で低下していることが明らかになってきた。しかし内皮前駆細胞の数と機能が低下するのかメカニズムは明らかではない。そこで、本年度の研究では、血管新生細胞療法の効果を増強する治療法を開発する目的で、骨髄から内皮前駆細胞の生成に障害を与える因子の検討を行った。 最近、アルドステロンが内皮障害をきたすことが明らかになってきているため、アルドステロンが骨髄単核細胞からの内皮前駆細胞の生成に影響を及ぼすか否かを検討した。その結果、アルドステロンが濃度依存的に内皮前駆細胞の生成を抑制することが明らかになった。さらにこの作用はスピロノラクトンで抑制されるため、ミネラルコルチコイド受容体を介する作用であることが示された。 これらの結果は、アルドステロンの新たな作用を明らかにするとともに、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が血管新生細胞療法の効果増強作用をもつ可能性を示すものである。
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