1.プロスタシン過剰発現動物モデルの作成 ヒトのプロスタシンを発現するアデノウイルスベクターを作製し、ラット尾静脈より投与したところ、投与後4日目より血圧が有意に上昇し、10日目頃をピークに低下していった。10日目の観察ではコントロールラットが100mmHg程度であるのに対し、プロスタシン過剰発現ラットでは130mmHg程度まで上昇していた。さらに血漿アルドステロン濃度がプロスタシン過剰発現ラットにおいて有意に上昇しており、これに呼応して血漿レニン活性は有意に低下していた。このことはプロスタシンが昇圧物質であることを示唆し、その昇圧にアルドステロンが関与していることを示している。 現在、この血圧上昇メカニズムを各種降圧剤の効果を検討することにより、薬理学的に解析中である。また、血圧上昇の責任臓器を探るためにアデノウイルスを臓器特異的に導入し、血圧の変化を観察中である。 2.TGF-βによるプロスタシンの発現調節 マウス皮質集合尿細管細胞(M-1細胞)にTGF-βを作用させると有意にプロスタシンのmRNA、タンパク質の発現が低下することを明らかにした。ラットプロスタシンのプロモータの解析により、この転写抑制作用はNF-κBを介していることも明らかとなった。TGF-βはM-1細胞においてIκBαの発現を誘導し、誘導されたIκBαがNF-κBを不活化することによってプロスタシンの転写を抑制することも明らかにした。
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