期間中、初年度には、IgA腎症モデルマウスにGFPトランスジェニックマウスの骨髄を移植したキメラマウスの解析を行った。ここで骨髄移植後により多くのドナー由来の細胞にて置換されたメサンギウム領域にて、よりその病変(IgAの沈着強度)が軽減していることが明らかになり、糸球体再構築を促進させることが糸球体障害の治療として有用である可能性が示唆された。またその実験的手段としてハブ毒の投与が有用であることを示した(Clin Exp Nephrol、基礎老化研究)。そこで本年度、糖尿病性腎症にて糸球体再構築促進が治療戦略となりえるかを調べるために以下の実験を試みた。streptozotocinにて糖尿病ラットを作成、更に本ラットの片腎を摘出して糖尿病性腎症類似の腎病変の作成を行った。更に本腎臓をGFPトランスジェニックラットへと腎移植を行った。この操作により、糖尿病性腎症を有する腎臓が正常血糖にさらされ、腎病変が修復に向かう。そしてこのモデルを解析することでドナー由来細胞の役割が判明する。しかし、糖尿病性腎症を起こした腎の移植を頻回に試みたが技術的に困難であり、更なる習熟を要する段階である。本モデルを完成に至らしめることは糖尿病性腎症の修復機序を解明し、また本腎症の修復を促進させるための知見を得るために絶対的に有用と考えられ今後も作成への努力を続ける。一方、腎再構築モデルとして、片側尿管結紮モデルを作成した後、結紮を尿管膀胱瘻の作成により解除するモデルを作成した。尿管結紮後、糸球体ボーマン嚢形態は変化(扁平上皮が立方体化)するが、尿官膀胱瘻作成後は再び修復することを明らかにした。ボーマン嚢周囲には骨髄由来細胞が集積することをこれまでの実験で明らかにしており、ボーマン嚢修復に骨髄由来細胞が関与することが示唆される。また一連の実験でボーマン嚢修復に蛋白シトルリン化が関与していることを明らかにした(Kidney Int)。
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