進行性IgA腎症では退縮したネフロンの中に傷害を免れたネフロンが混在しており、残腎機能保持のためには残存ネフロンにおけるperitubular capillary (PTC)、glomerular capillary (GC)に代表される微小血管系がいかに効率的に再構築されるかが重要である。そこで本研究では進行性IgA腎症の残存ネフロンを構成する微小血管系の形態学的特性を明らかにし、その知見から腎の再生機序解明に寄与することを目的とした。 1.球状硬化予球体(GS)が30%以上を占める進行性IgA腎症の腎生検組織でCD31及びCD34染色により血管内皮細胞を同定し、画像解析を行った。長期に渡り腎機能が安定した群では横断面積が100m^2以上のPTCの密度が高く(p<0.001)、個々のGCは内腔が拡大するwideningを呈する頻度が高かった(p<0.01)。 2.1に示した結果がどのような尿細管間質病変に関連しているのかを解析した。肥大尿細管を伴った太いレベルのPTCとwideningを示すGCは比較的良好な腎機能予後と関連していた(p<0.05)。またPTC密度はCD68染色やコラーゲン染色により同定された間質細胞浸潤と間質幅の拡大とも関連していたが、このことは腎予後との相関を示さなかった。 3.血管内皮作動因子の一つであるヘパリンを8週間持続投与し、腎機能の改善したものを対象にPTC、GCの形態学的所見を検討した。横断面積が100m^2以上の太いレベルのPTC密度は、ヘパリン治療前に比し、治療後において有意に増加していた(p<0.05)。 これらの知見は進行性IgA腎症の腎機能保持においてPTC、GCのintegrityを伴う再構築が肥大尿細管の形成と関連して何らかの合目的な役割を果たしており、かつ、この現象が血管作動因子の1つであるヘパリンの長期治療により誘導される可能性があることを示した。現在、血管のwideningに代表されるリモデリングの重要因子としてendothelial nitric oxide synthetaseに着目した解析を継続中である。
|