進行性IgA腎症では退縮したネフロンの中に傷害を免れたネフロンが混在しており、残腎機能保持のためには残存ネフロンにおけるperitubular capillary (PTC)、glomerular capillary (GC)に代表される微小血管系がいかに効率的に再構築されるかが重要である。また腎臓内の微小循環系には前述の血管系に加えて、リンパ路が特異な形で存在し、血管系や上皮・間質病変と関連して腎臓の障害からの治癒過程になんらかの役割を果たしているといわれる。そこで本研究では進行性IgA腎症の残存ネフロンを構成する微小血管系の形態学的特性を明らかにし、その知見から腎の再生機序解明に寄与することを目的とした。進行性IgA腎症の腎生検組織における解析結果では、肥大尿細管に伴う拡張した傍尿細管毛細血管は、その後の良好な腎予後に関係することが示された。この現象は、長期のヘパリン治療によっても誘導されうることが示された。その際、腎予後良好群と不良群間において、血管のwideningに代表される重要因子としてendothelial nitric oxide synthetaseの発現レベル、Eph-ephrinの発現形式に差は見られなかった。腎予後良好群と不良群間においてendothelial nitric oxide synthetaseの発現レベルに差は見られなかった。一方、間質リンパ管の解析において、腎予後の良好であった群は萎縮尿細管に伴うリンパ管新生が有意に多くなり、逆に腎予後不良群では間質炎症細胞浸潤に伴うリンパ管新生が有意に高くなる。これら、脈管系を制御する増殖因子として、VEGF-A、VEGF-Cなどの上皮系における蛋白発現レベルに有意な差や発現形式の変化は見られなかった。これらの知見は進行性IgA腎症の腎機能保持において肥大尿細管の形成と関連したPTC、GCのintegrityを伴う毛細血管の再構築に加えて、萎縮退行しつつあるネフロンにはリンパ路の構築が重要であり、これらのネフロン単位における脈管系の相応が長期に良好な腎予後に関係していることを示唆している。
|