検体については本年度135検体(123家系)増加した。既知の遺伝子異常を認めたものは29例、家族歴のあるものは39家系であった。 脊髄小脳変性症8型の責任遺伝子と発表があった染色体13q21に存在するCTA/CTG繰り返しの伸張については肯定的・否定的両方の議論がなされているが、われわれの遺伝子バンクの検体を用いて検討したところ、責任遺伝子となりうると考えられた。他の疾患群に比べて脊髄小脳変性症群において有意に伸張例が多く、ホモ伸張例は脊髄小脳変性症群でのみ認めた。CTA/CTG繰り返し伸張例では小脳症状のみならず、反射異常や不随意運動、パーキンソニズムを認め、特に若年発症例において精神発達遅滞を認めた。SCA6のCAG繰り返し伸張例においてSCA8でも伸張している割合が高いことを見いだし、SCA6とSCA8の発症の関連性が示唆された。 脊髄小脳変性症17型の責任遺伝子のTATA binding protein(TBP)遺伝子のCAG/CAA繰り返しの伸張についてわれわれの遺伝子バンクの検体を用いて検討した。全体での分布は36繰り返しが最多で37が次いでいた。CAG/CAA繰り返しの構造は患者群・正常群ともに同じであった。44から47繰り返しは小脳症状を有さない群でも認めており正常との境界領域であり、44繰り返しが発症に必要な最小伸張数と考えられた。しかし同一家系内の伸張例でも発症していない家族があり、浸透率は完全ではない。また中間サイズのホモ伸張例では発症しており、ホモ効果を認めた。
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