研究概要 |
平成15年度は,末梢血単核球(PBM) interleukin-2 (IL-2)産生能高値の重症筋無力症(MG)例の臨床的特徴と,免疫抑制剤FK506の早期効果について検討した. 末治療MG患者75例のPBM IL-2産生能を測定し,健常対照48例との比較,臨床所見(重症度,抗AChR抗体価,胸腺組織所見,胸腺摘出の効果)との関連を検討した.MG患者のPBM IL-2産生能は対照例と同程度の例から高値の例まで様々であったが,平均値を比較すると,対照例に比し有意に高値であった.MG患者のうち,PBM IL-2産生能が対照の平均+2SDを越える高値例は29例(39%)であり,その有意な臨床的特徴は,全身型重症,抗AChR抗体陽性,胸腺過形成,胸腺摘出有効であった.一部のMG例では,IL-2産生能がMGのT細胞病態を反映する可能性が考えられた. FK506はIL-2転写抑制作用を有し,T細胞活性化を抑制する薬剤である.MG患者に対する低用量FK506 (1日量3mg)の有効性をPBM IL-2産生能高値例9例と正常値例10例で比較した.IL-2産生能高値例では投与1週後に重症度スコア,IL-2産生能の低下がみられ,この効果は1ヶ月後も持続した.投与1週後,1ヶ月後の重症度スコア改善は,IL-2産生能高値例で正常値例に比し有意に優れていた.以上より,FK506はIL-2産生能高値のMG患者に対し,より有効である可能性が示唆された.FK506の長期効果を検討するため,現在,無作為割り付けによるFK506投与(18例,非投与(16例)MG例の長期観察を行っている.
|