脂肪細胞から分泌される分子(アディポサイトカイン)の中には、インスリン感受性を変化させるものがある。このような物質の分泌制御機構の解明はインスリン抵抗性の病態の理解に有用であると考えられる。 今回マウス培養脂肪細胞3T3-L1を用いて、ガングリオシドGM3によるアディポサイトカインmRNA発現の変化について、検討した。 細胞株3T3-L1を通常の方法で脂肪細胞に分化させ、day 10〜14で血清を除き0.5%BSAとして、GM3を培養液に添加し、24時間後に細胞を回収し、RNAを抽出した。加えたGM3の濃度は、これまでインスリンシグナルを抑制するとされている100μMのほか、50μMでも刺激した。マウスレプチン・アディポネクチンのmRNA発現の変化を検討するため、Aplied BiosystemのAssay on demandによりプライマー、プローブを購入し、ABI 7700を用いてreal time RT-PCRを施行した。内因性コントロールとしてGAPDHを用いた。レプチン/GAPDH、アディポネクチン/GAPDH mRNAはどちらも、GM3を加えなかったものと比較してGM3 50μMで最もよく抑制されていた。インスリンシグナルを抑制するとされている100μMでは、明らかな傾向はみられなかった。しかし、3T3-L1の分化後の日数や刺激時間などにより、結果が一定していないため、現在再現性のチェックを繰り返している。また、50μM以下の濃度でも発現が変化する可能性があり、さらに低濃度のGM3による変化についても検討を続けている。レジスチンのmRNA発現についても検討しているが、アディポネクチン、レプチンの変化と同様の傾向を示しているが、その変化は大きくはなかった。 現時点で、GM3はアディポネタチン、レプチンの発現を抑制する可能性があることが示唆された。
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