(1)酸化ステロールの高感度定量系の構築:LXRの内因性リガンドとして酸化ステロールが想定されている。酸化ステロールの分析方法としては、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)が主流である。しかし、GC-MSは試料の前処理が煩雑である点と、定量には同位体希釈法を用いるので、目的の酸化ステロール一つ一つについて同位体標識した内標準物質を調製しなければならない点が問題であり、LXRのリガンド決定には適さないと考えた。そこで本研究では、GC-MSの問題点を考慮する必要のない電気化学検出高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の導入を試みた。電気化学検出は、電極上で酸化あるいは還元する物質のみを検出するので選択性が高い点と、カラムを細くして電解効率を上昇させると高感度が期待できる点が利点である。先ず、コレステロールを電気化学的に酸化還元できるか否かについて、サイクリックボルタンメトリーを用いて検討した。その結果、作用電極としてグラッシーカーボン電極、溶媒としてアセトニトリルとイソプロパノールの混液を用い、+1.8V vs. Ag/AgClより正電位を印加すると、コレステロールの酸化波(電流値の増加)が観察された。この波高は、コレステロールの濃度依存的に増加した。よって、コレステロールを電気化学的に定量できることが明らかとなった。この反応を電気化学検出HPLCに応用したところ、コレステロールと幾つかの酸化ステロールについて、ピコモルレベルの定量が可能である予備的な結果を得ている。これを高知で行われた第64回分析化学討論会で発表したところ、日本工業新聞の2003年9月12日号に掲載された。 (2)LXR発現細胞の検索:マクロファージ系への分化が可能なヒト細胞株を用い、LXRの誘導機構を検討している。 (3)電気化学検出HPLCによる高感度定量の例:酸化ステロール分析法の構築の準備として、既知の電極酸化物質のフェニルフェノールを用い、電気化学検出HPLCによる高感度分析法を開発した。
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