生殖腺体細胞形成機構の解明

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15790477
• 研究機関: 福井大学(医学部)
• 研究代表者: 矢澤 隆志 福井大学, 医学部, 助手 (00334813)
• キーワード: 間葉系幹細胞 / SF-1 / cAMP / ステロイドホルモン / ライディッヒ細胞

研究概要

私達は生殖腺形成機構を解明するために、幹細胞から生殖腺体細胞を分化誘導するシステムの開発を行ってきた。マウス骨髄由来の間葉系幹細胞にオーファン核内レセプターであるAd4BP/SF-1を安定発現させたところ、いくつかの生殖腺マーカーが発現する事が解った。しかしながら、特定の細胞系譜マーカーは発現しなかったことから、さらなる因子が必要であると考えられた。
そこで、培地に成長因子の添加あるいは、細胞にさらなる遺伝子導入を行った。その中で、ゴナドトロピンのセカンドメッセンジャーであるcAMPを培地に加えた時、翌日にステロイドホルモン合成の律速酵素であるP450sccの発現が観察された。よって、cAMP処理によりSF-1を安定発現した間葉系幹細胞はステロイドホルモン合成系列の細胞にする事が解った。さらに、cAMP処理を続けたところプロジェステロン合成に必須の酵素である3β-HSD、アンドロジェン合成に必須の酵素であるP450c17が順次発現した。よって、この細胞はアンドロジェンを産生するライディッヒ細胞あるいは莢膜細胞の系列に分化していると考えられた。どちらの細胞系列に分化しているか、さらにマーカー遺伝子の発現を調べて特定した。すると、この細胞はライディッヒ細胞に発現する諸マーカーを発現しており、ライディッヒ細胞系列に分化しているものと考えられた。これは、細胞が産生する主なステロイドホルモンがテストステロンであることからも支持された。よって、間葉系幹細胞にSF-1を安定発現させ、培地にcAMPを添加することによってライディッヒ細胞系列に分化させられる事が解った。今後は、この分化システムを使ってライディッヒ細胞形成機構の分子メカニズムを調べると共に、他の細胞系列の分化システムを確立したいと考えている。

研究成果

• [文献書誌] Shou, Z.: "Genomic structure and analysis of transcriptional regulation of the mouse zinc-fingers and homeoboxes 1 (ZHX1) gene."Gene. 302. 83-94 (2003)
• [文献書誌] Yazawa, T.: "Involvement of cyclic adenosine 5'-monophosphate response element-binding protein, steroidogeenic factor 1, and Dax-1 in the regulation of gonadotropin-inducible ovarian transcription factor 1 gene expression by follicle-stimulating hormone in ovarian granulosa cells."Endocrinology. 144. 1920-1930 (2003)
• [文献書誌] Yamada, K.: "Analysis of zinc-fingers and homeoboxes (ZHX) 1-interacting proteins : molecular cloning and characterization of a member of the ZHX family, ZHX3."Biochem.J.. 373. 167-178 (2003)
• [文献書誌] Kawata, H.: "Zinc-fingers and homeoboxes (ZHX) 2, a novel member of the ZHX family, functions as a transcriptional repressor."Biochem.J.. 373. 747-757 (2003)
• [文献書誌] Yazawa, T.: "Abnormal spermatogenesis at low temperatures in the Japanese red-bellied newt, Cynops pyrrhogaster : possible biological significance of the cessation of spermatocytogenesis."Mol.Reprod.Dev.. 66. 60-66 (2003)