加齢に伴う臨床症状は成長ホルモン(以下GH)分泌不全症と共通点が多い事から、GH/IGF-Iの分泌動態変化がその一因と考えられている。つまり、GH遺伝子の発現調節に重要な下垂体特異的転写因子Pit-1蛋白について深く知る事は、加齢現象のメカニズム解明と創薬への応用を図る上で重要であると考えられる。 我々は、これまでPit-1がCBPとコンプレックスを形成し、GH遺伝子の転写を活性化するシグナルトランスデューサーとして機能することを明らかにしてきた。今回Yeast Two Hybrid法を用いて下垂体発現遺伝子をスクリーニングし、いくつかの候補遺伝子をクローニングした。 Pit-1とコンプレックスを形成する因子としてAES(amino-terminal enhancer of split)を同定した。これは197個のアミノ酸からなるDrosophnaにおけるGroucho蛋白のmammalian homologであり、機能的に不明な点もあるが、Drosophilaの研究から転写因子に結合してコリプレッサーとして働くと考えられている。我々の検討では、このAES蛋白はPit-1の転写活性化ドメインに結合するため、これまで報告されていないPit-1の転写抑制に関与する因子である可能性が示唆された。 また、Pit-1の転写活性に影響を与える因子として、蛋白質の翻訳後修飾因子の中からバイオインフォマティクスを用いて検索したところSUMO(small ubiquitin-like modifier)蛋白の可能性が浮上した。実際に、SUMOのE3-ligaseであるPIAS(Protein inhibitor of activated STATs)はPit-1の転写活性を特異的に抑制するというデータを得ており、PIAS/SUMO pathwayの関与が考えられた。
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