研究概要 |
摂食は視床下部のニューロペプチドにより制御されており,グレリンやレプチンなどの末梢からの信号による影響を受ける.視床下部はまたGHRH(growth hormone releasing hormone)やソマトスタチンを介し、下垂体からの成長ホルモン分泌を制御しており、摂食関連ペプチドにより影響を受けることが報告されている.本研究ではまず甲状腺中毒症で過食が起こることに注目し、甲状腺中毒ラットの視床下部摂食関連ペプチドの遺伝子発現と成長ホルモンの分泌について検討した。7日間の甲状腺ホルモン(T3)投与を行い甲状腺中毒症としたラットでは,血中レプチン濃度は低下するほか、視床下部NPY(neuropeptide Y)遺伝子発現の低下,POMC(pro-opiomelanocortin)、CART(cocaine- and amphetamine-regulated trahscript)遺伝子発現の増加が見られたが,血中グレリン濃度や胃グレリン遺伝子発現は有意に変化せず、甲状腺中毒症の過食にはグレリンは関与していないことを明らかになった(Neuroendocrinology)。しかし、この甲状腺中毒モデルでは血中成長ホルモン濃度に優位な変化は見られなかった.次に下垂体グレリンの遺伝子発現について検討した。GH欠損ラット、甲状腺機能低下状態のラットなど視床下部GHRH発現の亢進したラットでは、下垂体グレリンの遺伝子発現は増加していた。一方、GH欠損ラットへのGH補充、グルココルチコイド過剰状態ラット、甲状腺中毒状態にしたラット、絶食ラットなど視床下部GHRHの発現が低下する状態では下垂体グレリンの遺伝子発現が低下していることが明らかになった(第30回日本神経内分泌学会)。更に我々は、胃潅流法を用いて、インスリンおよびレプチンが胃に直接作用してグレリンの分泌を抑制することを明らかにした(Regul Pept)。
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