目的は摂食関連ペプチドのGH分泌に与える影響を明らかにすることである。まず摂食促進ペプチドであるagouti related protein(AGRP)のGH分泌に与える影響を検討した。無麻酔無拘束下でAGRPをラット脳室内に投与したがGH分泌に影響を与えず、下垂体初代培養細胞に対しても影響を与えないことを報告した(Regl Pept)。また摂食抑制物質であるNeuropeptide W(NPW)は、脳室内投与によりGHの分泌を抑制すること、この作用は抗ソマトスタチン血清を投与したラットでも発現すること、またNPWの脳室内投与で視床下部GHRH遺伝子発現が抑制されることをin situ hybridizationで明らかにした。このことからNPWがGHRH細胞を介してGH分泌を抑制することを報告した(第31回日本神経内分泌学会)。また消化管より分泌され摂食抑制作用を持つpeptide YY(PYY)を、絶食ラットに末梢投与したところ、絶食によるGH分泌抑制が解除されることを明らかにした(第78回日本内分泌学会発表予定)。また下垂体グレリン蛋白、および遺伝子発現について検討した。GH欠損ラット、甲状腺機能低下状態のラットなど視床下部GHRH発現の亢進したラットでは、下垂体グレリン、および遺伝子発現は増加した。一方、GH欠損ラットへのGH補充、グルココルチコイド過剰状態ラット、甲状腺中毒状態ラット、絶食ラットなど視床下部GHRHの発現が低下する状態では下垂体グレリン、および遺伝子発現が低下することが明らかになった(Endocrinology)。また、IGF-Iが下垂体グレリン受容体の遺伝子発現を抑制すること(Regul Pept)、雌ラット視床下部ではエストロゲン受容体(ER)αがGHRH細胞に発現し、ERβは発現していないことを明らかにした(Neurosci Res)。
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