研究概要 |
びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBL)では化学療法で高率に寛解が得られるものの,5年生存率は30〜38%と予後不良の疾患である.したがって新たな戦略が必要とされている.新たな統一プロトコールを作製しても,DLBLは病態が多様で,疾患としての均一性が乏しいので,予後の改善は期待しにくい.そこで初診時に患者を層別化して治療計画を立てることを考え,染色体異常が予後予測因子となるかどうかを検討した.染色体異常の検出には蛍光in situハイブリダイゼーション(fluorescence in situ hybridization, FISH)法を用いた.対象は50例のDLBCLで,内訳は男性31人,女性19人,年齢は28-86歳であった.短期培養後にカルノア固定し,FISHを行った.プローブは以下を用いた.bacteriophageクローンIgγ,人工酵母クローンI2,YA153a6,cosmidクローンcosB5-1,2.一部の症例ではパラフィン包埋組織切片上でFISHを行った.生存率はKaplan-Meier法により統計学的に解析した.IGH/BCL6は7例,IGH/BCL2は4例,IGH/c-MYCは3例で認められた.IGH/BCL6陽性例はIPIスコアの高い傾向があった.IGH/BCL2陽性例は陰性例と比較して早期死亡は少なかったが最終的には全例死亡していた.IGH/c-MYC, IGH/BCL6陽性例の予後は非常に不良であった(2年生存率0%,40%).IGH/BCL6陽性あるいはIGH/c-MYC陽性DLBLの予後は陰性例に比較して予後が不良であることが判明したので、このような転座をもつ症例は初診時より強力な治療を行うことで予後を改善できる可能性があることを本研究でしめすことができた.
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