耐性HIVの克服とより安全で長期に渡るHIV感染症のコントロールのためにHIV複製ステップの1つであるウイルス-細胞融合(fusion)をより詳細に解明することが本研究の目的である。 本年度はgp41由来のペプチドであるC34に対する耐性株をin vitroで誘導し、そのウイルス学的性状を解析した。C34耐性HIVはgp120領域に5つのアミノ酸のdeletionとgp41領域に7つのアミノ酸置換を有しており、そのうちgp41のI37KとN126Kが耐性に重要な働きをしていること感染性HIVクローンを用いた実験と合成ペプチドの結合実験より明らかにした。さらにcompetitive HIV replication assayとp24産生量により、それ以外の変異は耐性変異の導入によって低下したHIV複製能を改善していることを明らかとした。I37K変異の位置はRev responsive element (RRE)領域でもあり、この変異のためにRREの高次構造が不安定化していた。一方、耐性に関与してなかった変異(D36Gなど)はこの不安定化した高次構造を安定化させることで複製能を改善させていた。この耐性ウイルス性状をさらに解析することは、fusionにおけるgp41の意義を明らかとすることのみならず、fusionにおけるkey amino acid(s)の同定にも資すると考えられる。 これらの解析と共に来年度は抗HIV-fusion剤の迅速なELISA法を応用したスクリーニング法を確立し、HIV-細胞融合阻害活性を有する小分子化合物の同定を目指す。この化合物の同定が治療上、最大の問題となっている薬剤耐性ウイルスの克服に繋がり、エイズ感染者の治療に新展開をもたらすことが期待される。
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