末梢血幹細胞の持つ特性の解明を最終目的に、特にいかにして造血幹細胞が骨髄から末梢血に誘導されるのかという点に注目して研究を行なっている。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の濃度勾配によって造血幹細胞が移動することは以前から知られているがどのような分子がそこに関与するのかは十分に解明されていない。平成15年度はマウスの骨髄幹細胞と末梢血幹細胞に発現されている様々な分子の発現の比較から検討を開始した。現在解析中であるが分子量120から150ダルトンの間に両者において発現量に明らかに差が認められるタンパクが発見された。骨髄幹細胞では発現が少ないが末梢血幹細胞で発現が上昇しており骨髄血管からの離脱に利用されている分子の可能性があり興味深い。この分子に対する結合因子は骨髄の血管内皮細胞に発現している可能性が高いと考えられ同時に検索を進めている。一方、両幹細胞からDNAを抽出し受容体型チロシンキナーゼの保存領域を検出するPCRプライマーセットを利用してどのような分布にあるかを検討した。明確な差は得られていないが、末梢血幹細胞から既知の受容体型チロシンキナーゼとは異なると考えられるDNA配列が得られている。新規の分子である可能性があり現在クローニングを行なっている。今後同様の手段を用いて臍帯血幹細胞と臍帯血管内皮細胞に特殊な分子の発現が存在していないのかを検討していく予定である。以上のように今年度は新規の造血幹細胞関連の分子の存在の可能性が見いだされており来年度に引き続き検討する。
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