平成15年度(以下、昨年度)に引き続き主に2点の研究を行なった。まず骨髄幹細胞と顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)により誘導された末梢血幹細胞の細胞表面分子の差異を検討する中で昨年度は発現量に差のあるタンパクを見いだしており本年度はその分子の解析を行なった。構造的な特徴を明確にするには至っていないが、このタンパクを分離精製しラットを免疫した後に得られた抗血清をポリクローナル抗体として組織免疫染色を行なった。その結果、末梢血幹細胞だけでなく胎盤、脾臓、骨髄などの血管で部分的に染色される箇所が確認された。胎盤では臍帯付着部周辺の血管とその他の部位の血管とで染色性に差があり発現量の違いがあるものと考えられる。他の造血幹細胞や血管内皮細胞に発現する分子との違いを検索しているが、特徴的な発現をうかがわせており興味深い分子であることから分子構造の解析を進め、モノクローナル抗体の作成に進んでいきたい。もう一つ昨年度から検討を進めている内容として、末梢血幹細胞分画から得られた既知のものとは異なる受容体型チロシンキナーゼ分子の機能解析の検討がある。前述の研究を主に進めたことから相対的に検討が遅れているものの、クローニングを終了し全長のDNAシークエンスがほぼ終了したことからモノクローナル抗体の作成に進んでおり、この分子の機能解析を行なう予定である。末梢血幹細胞においてどのような役割を持つのかはまだ明らかではないが、骨髄幹細胞での発現の差異が明らかになれば骨髄からの離脱やあるいは骨髄への生着のメカニズムの解明につながるものと期待できる。
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