研究プロジェクトの3年間の初年度である。11p15転座型白血病/MDSにおいて、我々はこれまで3つの新規相手遺伝子を単離・同定した。本研究の目的は、未知の相手遺伝子の単離を行い、機能を明らかにすることにより、11p15転座に共通した白血病発症のメカニズムを明らかにし、将来の治療法の発展に貢献することである。今年度の研究成果は以下の通りである。 1)NUP98-HOXD11融合遺伝子を有するAMLの微小残存病変(MRD)の評価:以前我々が同定したNUP98-HOXD11融合遺伝子を有するAMLの患者において、治療後の骨髄の細胞を用いてRT-PCR法でMRDの検討を行った。治療後2か月後より治療終了後までMRDは消失していた。血液検査および骨髄検査でも再発していないことから、NUP98-HOXD11融合遺伝子のMRDは、臨床経過を観察する上で有用であると思われる。 2)NUP98-HOX融合遺伝子を有する白血病が有する他の遺伝子異常の同定:NUP98-HOX融合遺伝子だけでは白血病化には十分ではないことが予測された。そのため、他の遺伝子変異(second hit)の存在を検討した。まず、造血の分化に関与するAML1遺伝子変異の有無を検討したが、NUP98-HOX融合遺伝子を有する白血病ではこの変異は認められなかった。NUP98-HOX融合遺伝子は造血の分化を制御する報告がみられるので、次のステップとして、細胞の増殖に関与する遺伝子変異の有無を検討した。HOX遺伝子の機能を制御しているMLL遺伝子の転座を有する白血病において、Genechipを用いて遺伝子発現プロファイリングを行ったところ、いくつかの細胞の増殖に関与する遺伝子の発現に差が認められた。NUP98-HOX融合遺伝子を有する白血病についても今後研究を極めてゆきたい。
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