研究概要 |
1.川崎病における髄液/血清サイトカインの検討 川崎病の予後決定因子として、冠動脈病変の他に、乳児期の遷延性過高熱や大脳血管炎等に伴う中枢神経病変があるが、後者の発症機序について十分な検討はない。炎症性サイトカインを用いて、中枢神経系と全身性炎症所見の差異を検討した。 不穏、易刺激性、不機嫌、頭痛等を認め、髄膜炎との鑑別のため、髄液検査を施行した川崎病6名(男児4例、女児2例、5か月〜3歳2か月、18.5±12.2か月、7.2土2.9病日)。γグロブリン反応性より3群に分類。A群:γグロブリン無効、冠動脈瘤形成2名、B群:γグロブリン無効、冠動脈瘤なし3名、C群:γグロブリン有効、冠動脈瘤なし3名。血清、髄液のIL6、sTNFR1、sIL2Rを測定し、髄液/血清比を検討した。 B群1名を除く5名に髄液細胞数の上昇をみ、無菌性髄膜炎の合併率が高いことを確認した。4名(A群1名、C群3名)がIL6の髄液/血清比上昇(2.60、2.95、4.33、17.14)。B群1名がsTNFR1の髄液/血清比上昇(1.32)。髄液sIL2Rの上昇例はなかった。 髄液中炎症性サイトカインの上昇は、高率に認められ、γグロブリン反応性や冠動脈瘤とは相関がなく、冠動脈病変とは別の炎症機序によるのか、または、共通の炎症機序は何かと検討する上で有用と思われた。今後、川崎病の中枢神経系病変の評価と、治療法、予後を検討する必要がある。 2.アトピー性脊髄炎におけるサイトカインの検討 重症アトピー性皮膚炎12歳男児が、半年の経過で急速に両前腕筋力低下、筋萎縮を発症。血清IgE11,400IU/ml、ダニ、卵、牛乳、大豆、小麦、米、豚肉、カンジダ強陽性。筋電図で背側骨間筋(13mV)、前脛骨筋(4mV)に末梢神経障害を示す巨大電位。脊髄根障害を示すF波消失。MRIにてChiari奇形I型と広範囲(C1-L1)脊髄水空洞症。髄液、細胞数(1/μl)、蛋白量(22mg/dl)に異常ないが、IgE(9.0IU/ml)、IL8(33pg/ml)、可溶性IL2R抗体(81IU/ml)が上昇。EDN、IL5、IL6、IFNγ、eotaxin、RANTESは検出限度以下。 本症例はアトピー性脊髄炎に類似した臨床像を呈した。Chiari奇形I型を基礎に持つが、Chiari奇形に伴う脊髄水空洞症の他患児では上記サイトカインの上昇はみられず、アトピー性脊髄炎の存在が脊髄水空洞症の発症、増悪に関与したと考えた(Korematsu S et al.Increase of CSF sIL2R index in a patient with atopy and syringohydromyelia. Pediatr Int 2005;47:in press)。
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