1)細胞株の樹立 我々は、痛覚の欠損、無発汗、高体温、発達遅延を主訴とする2ヶ月の女児を診断した。本例は両親が独立したNGFの高親和性レセプターであるTrkAのヘテロ変異を持っており、その変異アレルを受け継いでいる事が解った。両親にインフォームドコンセントを得て、末梢血より単核球を分離し、EBウイルスを感染させ不死化したBリンパ球細胞株を樹立した(TrkA(mt/mt)、TrkA(wt/mt)EB-LCL)また健常人ボランティアより正常コントロールを樹立した。(TrkA(wt/wt)EB-LCL) 2)N6Fはgliotoxinにて誘導されるアポトーシスを阻害する TrkA (wt/wt) EB-LCLをgliotoxin(100μM)を添加し12時間培養するとannexinVに染色される細胞が増加する事がFACSを用いることにより観察された。すなわちアポトーシスが誘導された。このアポトーシスはNGF(400ng/ml)を添加する事により抑制された。一方、TrkA (mt/mt) EB-LCLとTrkA(wt/mt)EB-LCLではNGFによるアポトーシスの抑制は観察されなかった。 3)NGFはBcl-2蛋白の誘導安定化に寄与する TrkA (wt/wt) EB-LCLではgliotoxinで誘導されるアポトーシスを起こした時、Bcl-2蛋白の発現が低下し、NGFを添加する事によりBcl-2蛋白が再び誘導される事がウエスタンプロッティング法にて確認された。これらの変化はTrkA (mt/mt) EB-LCL及びTrkA (wt/mt) EB-LCLでは欠失していた。則ち、NGFはBcl-2蛋白を誘導若しくは安定化させる事によりEB-LCLをアポトーシスから回避させる事が解った。
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