研究概要 |
低出生体重児が、成人期にはいって高血圧などの心血管性疾患を合併することが多く報告されていることより、胎児期の発育環境が児の健康状態に影響を及ぼす可能性が考えられる。カテコルアミンがその一要因かどうかをみるために、ニワトリ胚を用いて胎生後期にエピネフリンを継続負荷した。3種類の濃度(10^<-4>mol,10^<-5>mol,10^<-6>mol)のエピネフリンを生理食塩水に溶解し、孵卵11〜15日目に滴下連続投与した。コントロールとして生理食塩水のみを同様に滴下した。出生(孵卵20日)直前の孵卵19日目にニワトリ胎仔を採取し、体重測定後、各臓器の血管を組織学的に検討した。体重は高濃度群のものがコントロール群より低体重を示した。組織切片はヘマトキシリン/エオジン染色、マッソン染色(膠原線維を青色に染色)、ヴィクトリアブルー・ファンギソン染色(弾性繊維を青色、膠原線維を赤色に染色)を実施した。肺動脈中膜はエピネフリン濃度に従って肥厚しており、この所見はHeath-Edwards-Grading IIに匹敵する肺高血圧病変を示した。心臓では、右心室/左心室重量比がエピネフリン高濃度群で顕著な増加を認めた。他臓器の動脈中膜の厚さはコントロール群と比べたが差は見られなかった。これらの結果、胎生後期の高濃度エピネフリンが新生児高血圧を引き起こす可能性が示唆された。
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