微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)の病態に、リンパ球を中心とした免疫異常の関与が指摘されているが、その詳細は未だ十分に明らかではなく、サイトカインの異常についても未だ一定した見解は得られていない。 今回、MCNSの病態におけるサイトカインの関与をより明らかにする目的で、小児MCNS患者の初発時と寛解時における末梢血単核球(PBMCs)を採取し、サイトカインのmRNA発現をcDNAアレイシステムを用いて包括的に比較検討した。 今回の検討においては(1)小児MCNS患者におけるそれぞれ初発時(ステロイド投与前)と完全寛解時(ステロイド離脱後)にPBMCsを分離する。(2)従来の研究の多くは、患者PBMCをmitogen(s)で刺激してサイトカイン発現を検討しているが、今回はmitogen(s)刺激のない、より生理的な病態に近い状態で患者PBMCにおける多種類のサイトカインmRNA発現を検討する。(3)サイトカインmRNA発現は患者間やステロイド投与により大きく影響されることが予想されるため、今回は、同一患者で、初発時・寛解時ともにステロイド使用のない状態で比較検討をおこなうこと等に留意した。 cDNAアレイシステムにおいて2倍以上の発現変化を認めた遺伝子は50個あり、そのうちのいくつかの遺伝子についてReal-time PCRにて発現変化を確認した。その結果Th1サイトカイン、Th2サイトカインともに上昇していたが、Th2がより優位であった。このことから、サイトカインはMCNSの病態に関与し、そのTh2優位な上昇が病態に関与している可能性が示唆された。 また、Th2優位なアレルギー疾患でも上昇を認めるRANTESが、MCNSの初発時に上昇していることを確認しており、今後はMCNSの病勢、血清IgE値、好酸球数、リンパ球サブセットの変化とサイトカインネットワークとの関係について検討する予定である。
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