研究概要 |
本年度は昨年度に引き続き候補遺伝子を遺伝子導入して樹立したstable cell lineを用いて、未分化なES細胞からGH産生細胞へと分化誘導することを主な目的として行った。 ・テトラサイクリン添加誘導による発現調節可能なES細胞のクローニング あらかじめテトラサイクリン発現調節用のベクター(zeocin耐性)を導入したES細胞に上記のコンストラクトをリン酸カルシウム法にてトランスフェクトし、白血病抑制因子(Leukemia inhibitory factor : LIF)を添加した高グルコースD-MEM培地、G418存在下でpositive selectionを行った。その結果、Pit1およびPtx1導入ES細胞をstable cell lineとして各数クローンずつ樹立することができた。さらにそれぞれのクローンをテトラサイクリン存在下で目的タンパクの発現を誘導した後、Western blottingにより発現量をチェックし、発現量の高いcell lineを以降の実験に使用した。 ・ES細胞の分化誘導の検討 上記のようにクローニングしたcell lineを用いて様々な条件下で分化誘導をかけた細胞をRT-PCRにより発現している各段階のマーカーをmRNAレベルで検出した。その結果、Day 6のPtx1,Pit1導入ES細胞のどちらにおいてもWTと比較してProp1の発現が増強していた。また、GHの発現はWTではその発現は検出できなかったが、Ptx1導入ES細胞でわずかに、Pit1導入ES細胞でその発現が明確に検出することが出来た。またThyroid系の細胞のマーカーにおいても同様にWT, Ptx1と比較して強くPit1導入ES細胞に発現が認められた。 次に分化した細胞をanti-GH抗体を用いて免疫染色を行った。その結果、Ptx1ではごく少数の陽性細胞を検出することが出来たが、Pit1においては全体のおよそ20%の細胞がGH陽性細胞に分化していた。 Tetracyclineによる転写因子発現の制御の検討の結果、早い時期にしかも短期間に発現させたものがGH産生細胞へ効率よく分化誘導することが示唆された。これらの成果は第4回日本再生医療学会ワークショップにて発表を行った。 来年度はGH以外のマーカーをチェックするとともにステロイドなどを添加した場合など培養条件を検討し、更には分化した細胞の機能を検討していく予定である。
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