研究概要 |
昨年度に引き続き候補遺伝子を遺伝子導入して樹立したstable cell lineを用いて、未分化なES細胞からGH産生細胞へと分化誘導することを主な目的として行った。 Pit1及びPtx1を遺伝子導入してクローニングしたcell lineを用いて様々な条件下で分化誘導をかけた細胞をRT-PCRにより発現している各段階のマーカーをmRNAレベルで検出した。その結果、Day6のPtx1,Pit1導入ES細胞のどちらにおいてもWTと比較してProp1の発現が増強していた。また、GHの発現はWTではその発現は検出できなかったが、Ptx1導入ES細胞でわずかに、Pit1導入ES細胞でその発現が明確に検出することが出来た。またThyroid系の細胞のマーカーにおいても同様にWT, Ptx1と比較して強くPit1導入ES細胞に発現が認められた。 次に分化した細胞を抗GH抗体を用いて免疫染色を行った。その結果、Ptx1ではごく少数の陽性細胞を検出することが出来たが、Pit1においては全体のおよそ20%の細胞がGH陽性細胞に分化していた。 Tetracycline(Tet)による転写因子発現の制御の検討の結果、早い時期にしかも短期間に発現させたものがGH産生細胞へ効率よく分化誘導することが示唆された。これらの成果は第4回日本再生医療学会にて発表を行った。 また、ステロイドを培地に添加することにより分化誘導への影響を検討した。ES細胞の分化誘導と同時にデキサメタゾン(DEX)を培地中に添加し、その誘導能を上記と同様の方法で検討した。その結果、DEXを添加した方が添加しなかったものと比較して分化誘導は促進されたが、その能力は微弱であった。 本研究の課題に関して、マウスES細胞を用いて下垂体細胞特にGH産生細胞へと分化誘導することを試み、転写因子を遺伝子導入することでWTと比較して効率的に誘導すること可能であった。また、導入した遺伝子の発現をTetによって調節するシステムを作製することにより、その発現期間を調節することも重要であるとの知見を得ることもできた。
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