研究概要 |
[研究の背景]脳の神経細胞終末(シナプトソーム)内に存在するミトコンドリアは、神経伝達物質輸送にとって依存度は非常に高い。神経細胞、特にシナプトソーム内ミトコンドリアの機能低下あるいは遺伝子疾患は、ミトコンドリア病にみられる精神異常や運動発達遅延,痙攣や知能低下,MELAS症、さらにはPerkinson病や老化とも深い関係があり、遺伝子欠損によって異常が生じる遺伝子群のなかでもミトコンドリアDNA変異との関係は注目されている。これら病状の共通要因のひとつとして、脳内神経伝達物質輸送制御の異常が関係すると考えられる。 [研究の目的]本研究では実験動物を用い、神経細胞終末における神経伝達物質輸送活性(Synaptosomal Uptake, release,content)、酸素消費を指標とした病態解明を行う。 [結果]今回、野生型マウスICR(Crj : CD-1)をモデルに実験系の構築を行った。調製した粗シナプトソームに対し、Glutamate(Glu)・GABAのシナプトソーム内・粗ミトコンドリア画分内・小胞画分内への取込と放出の実験系を構築したミトコンドリア阻害剤であるロテノンそしてアルギニンに対するアミノ酸量の動態を調べた。ロテノン存在下においては濃度依存的な取込量減少が示された。一方、アルギニンによって取込量は減少する一方で放出が生じた。アルギニンはMELAS患者急性発作時及び予防薬として使用され、その脳虚血部位血管拡張作用は知られているが、これ以外に神経終末のGlu・GABAの取込・放出に加えて酸素消費にも影響を及ぼすことが分かった。今後詳細な解析を行い、野生型マウスにて実験系の確立・データを蓄積し、野生型加齢マウス並びに老化モデルマウスに応用する。 [第3回ミトコンドリア研究会年会 発表][平成15年度第2回班会議(H14-小児-006)発表]
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