本研究はアトピー性皮膚炎(AD)発症の初期段階から関与する遺伝子群を単離、同定し、かつその生体内での動態を包括的に解析することを目的としている。平成15年度は、ADの疾病モデル動物であるNC/Ngaマウスを用いて、生後より皮膚炎発症における一連の過程で特異的に発現する遺伝子の同定をおこなうため、対象群ならびにコントロール群について血中IgE濃度の差異ならびに皮膚炎発症の経過を追って、複数の組織における発現遺伝子の変化をディファレンシャルディスプレイ(DD)法を用いて解析し、網羅的な変動遺伝子の単離を試みた。ELISA法を用いて測定した血中IgE濃度ならびに、さまざまな程度の皮膚の炎症を指標とし、それぞれの個体からサンプルを収集、コントロール群との遺伝子発現について比較した。その結果、免疫機能に関与すると考えられるものをはじめとして、転写因子、代謝関連酵素など複数の遺伝子の発現がコントロール群と比較して変動していることが示唆された。現在これらの発現変動遺伝子について、マイクロダイセクションを用いたQuantitative-RT-PCRによる特定細胞での発現モニタリングなどの手法を用いた詳細な検討、ならびにこれら遺伝子量の変動に影響を受ける遺伝子群の検出を目的としたマイクロアレイの作製をおこなっている。 さらに、炎症部位において観察され、かつ発現が変動していると考えられる遺伝子について、その塩基配列を決定したところ、BALB/cならびにC57BL/6J系統などの他系統との間にアミノ酸置換を伴う塩基置換が観察されたことから、この遺伝子の機能についても詳細に解析し、皮膚炎発症との関連についても検討している。
|