本研究はアトピー性皮膚炎(AD)発症の初期段階から関与する遺伝子群を単離、同定し、かつその生体内での動態を包括的に解析することを目的としている。平成16年度も引き続き、ADの疾病モデル動物であるNC/Ngaマウスを用いて、生後より皮膚炎発症における一連の過程で特異的に発現する遺伝子の同定をおこなうため、対象群ならびにコントロール群の皮膚炎発症の経過を追って、発現の変動する遺伝子の単離を試みた。その結果、脂質の合成に関与すると考えられているタンパク質をコードする遺伝子1種、接着因子であるインテグリンの1種、未知のタンパク質をコードする遺伝子1種について、正常個体と皮膚炎発症個体について発現に違いが存在することが示唆され、現在これらの遺伝子について解析を進めている。本年度研究実施計画にも記載したごとく、これら遺伝子のSNPについて詳細に解析し、Mouse Genome Sequencing Consortium(http://www.ensembl.org/Mus musculus/)のデータベース(Ensembl mouse assembly 32)上のC57BL/6系統と比較したところ、2つの遺伝子についてアミノ酸置換を伴うcSNPが観察された。さらに、このアミノ酸置換を伴う遺伝子と相互作用するタンパク質を同定するため、イーストツーハイブリッド法による解析を行い、一次スクリーニングにおいて、計24個の陽性クローンを得た。さらに二次スクリーニングにより計3種の遺伝子産物が高い確率で相互作用する可能性が示唆された。ADの候補遺伝子のSNPと標記疾患を関連づけるためには、遺伝子の発現解析ならびに、遺伝子産物の生化学的解析さらにはin vivoでの表現型の証明が必要であると考えられる。よって現在、表記遺伝子がコードするタンパク質を認識する抗体の作製をおこない、組織での発現部位さらには発現時期の特定、相互作用すると考えられる因子との関係について調査している。
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