研究概要 |
SDラットの妊娠10〜20日に2.5〜5%(w/v)エタノールを含む液体飼料を与え、その仔を8週齢で実験に用いた。対照にはエタノールをシュークロースに置き換えた液体飼料を等量与えたラットの仔を用いた。ラットを灌流固定して脳を取り出し、視交叉上核(SCN)を含む領域の切片を作製して抗5-HT、抗PACAP,抗NPY抗体で免疫染色を行ったが、エタノール曝露の影響は認められなかった。また、ラットを2日間恒常暗下で飼育した後、15分の光刺激を与え、光刺激開始から30分後にラットを灌流固定して脳を取り出し、SCNでのcfos発現を免疫染色により調べた結果、エタノール曝露ラットと対照ラットではSCNにおけるcfos陽性細胞の数に差は認められなかった。さらにSCNを含む領域の脳ホモジネートを調整し、5-HTと代謝産物である5-HIAAをHPLCを用いて定量したが、エタノール曝露の影響は観察されなかった。 まら、SCNでのシナブス形成時期を含むラットの生後4〜9日にエタール(6.0g/kg/day)を含む液体飼料を投与し、概日リズムの光同調を観察した。対照にはエタノールをマルトースに置換した液体飼料を与えたラットを用いた。10〜12週齢でこれらのラットの輪回し行動を経時的に観察し、活動期の開始と活動リズムの頂点位相を解析した.12h/12hの明暗(LD)周期下における活動期の開始時刻および活動の頂点位相については、エタノール曝露ラットと対照ラットとの間に有意な差を認められなかった。LD周期を6時間後退させ、活動期の開始と活動のリズムの頂点位相との推移を観察し、新しいLD周期への概日リズムの同調を解析した結果、エタノール曝露ラットでは対照ラットと比較して新しいLD周期が有意に遅れていた。以上より、新生存期のエタノール曝露は概日リズムの光同調機構に障害を引き起こすことが示唆された。
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