我々は先に皮膚形態形成期のマウス皮膚より新規分子hornerinを単離し、その構造の特徴と皮膚における発現について検討して、それがprofilagrinと類似した分子であることを報告した。 今回我々はヒトhornerinの同定とその発現について検討した。マウスhornerinの塩基配列を用いたホモロジー検索と部分的RT-PCRによって、ヒト染色体1q21上にhornerin遺伝子を同定した。この遺伝子は2850アミノ酸をコードしていた。推測されるタンパク質の構造は、N端のEF-handドメインと多数の反復配列よりなり、マウスhornerinやヒト・マウスprofilaggrinと類似していた。RT-PCR法によりヒトhornerinの発現を検討したところ、正常皮膚、胎児皮膚、舌では発現がみられず、正常外陰部皮膚と尋常性乾癬患者から得た皮膚で発現が確認された。さらに創傷治癒過程の皮膚においても受傷後5日目より発現がみられた。ヒトhornerinタンパク質の発現・局在を検討するため、ヒトhornerinの反復配列の一部を認識するポリクローナル抗体を作製した。作製した抗体を用いたウェスタン解析ではRT-PCR法の結果と同様に正常皮膚では反応せず、乾癬皮膚でシグナルが確認された。また免疫染色法では、乾癬患者より得た皮膚と創傷治癒過程皮膚で表皮顆粒細胞内に顆粒状に反応した。 マウスではhornerinはprofilaggrinと微細な局在では相違点があるものの、ほぼ同様なパターンで発現していたが、ヒトではその発現パターンが大きく異なっており、ヒトhornerinはある特殊な状況においてのみ発現する分子と推測された。
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