BMP/TGFβファミリーであるBMP-4とその阻害分子であるノギンの毛包の発生過程における役割を明らかにするため、以下の実験を行った。 1.ヘテロノギンノックアウトマウスのガラクトシダーゼ染色行い、ノギンの毛包の発生時における発現部位を明らかにする。 2.ホモノギンノックアウトマウスの毛包の数と発生のステージを正常マウスと比較検討する。 3.BMP-4とノギンをビーズに吸着させた後、培養中の胎生13.5日のマウス皮膚に2日間加え、この皮膚の組織をアルカリフォスファターゼ染色、増殖のマーカーであるKi67染色、アポトーシスの指標となるTUNEL染色し、毛包の数と発生のステージ、増殖している細胞の割合を比較する。 4.免疫組織化学法により、これまで毛包の正常な発生に必須ということが明らかとされた分子の発現をノギンノックアウトマウス皮膚と正常マウス皮膚との間で比較検討する。 これらの実験の結果、ノギンは毛包の発生時において間葉由来の真皮乳頭細胞に発現しており、ホモノギンノックアウトマウスでは毛包の発生が遅れていることが明らかとなった。さらに、ノギンはマウス皮膚の培養系で毛包の発生を促進し、Lef-1、NCAMの発現を上げ、Ki67陽性細胞の割合も増加させた。この効果はBMP-4を同時に加えることにより消失した。このようなBMP-4とその阻害分子であるノギンの毛包の発生過程における役割を明らかにすることにより、毛包の発生機構をより明確にすることができ、脱毛症の病態解明ならびに新たな脱毛症の再生治療の開発に大きな意義があると思う。
|