研究課題
本年度、われわれはS100Cが細胞質から核内へ移行することで表皮角化細胞の増殖を抑制することを見出し、その作用機序を分子レベルで解明し報告した(JCB 2003;163,825-35.)。さらにS100CのN末の19アミノ酸よりなるペプチドを作成し、そのS100Cペプチドを核内へ導入することで、さまざまな細胞株にアポトーシスを誘導することを証明した(論文投稿中)。以上の実験結果をふまえてさらに我々はS100Cの核内分布と皮膚疾患、とくに表皮角化細胞の増殖異常のみられる尋常性乾癬との関連について研究をすすめているところである。現在までに得られている知見は、乾癬病理組織におけるS100Cの細胞内分布についてのもので、正常表皮では100Cの核内分布がみられない細胞は活発に増殖している基底細胞のみであるのに対して、乾癬病理部においては有棘層においてもS100Cの核内移行のみられない細胞が多数存在しているのが確認され、乾癬における表皮角化細胞の増殖亢進とS100Cの核内移行との関連が強く示唆された結果を得ることができた。またわれわれは乾癬の治療に用いられている活性化ビタミンD3がin vitroにおいてS100Cの核内移行を誘導することを見出した。この事実は活性化ビタミンD3の乾癬治療における奏功機序にS100Cの細胞内分布が関与している可能性を示唆しており、非常に興味深いものと考えている。現在、乾癬患者の病理組織のサンプリングをすすめている最中であり、活性化ビタミンD3の治療により改善した病変部においてS100Cがどのように分布しているのかにつき今後検討していく予定である。
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