研究概要 |
これまで、サイトカイン(Il-1β,TNF,GM-CSF,G-CSF)による好中球活性化機構について解析を行い、特定のMAPKサブタイプカスケードがサイトカイン特異的に活性化されることを明らかにしてきた。今回、我々はTNF,GM-CSF,G-CSFによるサイトカイン刺激により、細胞骨格が再構築され、その主要な構成成分である細胞内アクチンが「脱重合」すること、およびそれがMAPKサブタイプカスケードを介して行われており、細胞運動、接着、活性酸素産生に不可欠であることを明らかにした。サイトカインによるアクチンの「脱重合」には、アクチン脱重合因子と呼ばれるアクチン結合タンパク質であるコフィリンの関与が予想された。ところが、サイトカインによるアクチンの「脱重合」にはコフィリンのリン酸化や脱リン酸化は関与していなかった。細胞内pHの変化が、コフィリンのリン酸化によらない活性化を誘導する可能性も考えられた。細胞骨格に関与するタンパク質にRhoがある。Rhoからのシグナルはコフィリンを通じてアクチン細胞骨格を制御すると同時にミオシン軽鎖を通じて運動収縮力を制御する。サイトカインによる好中球活性化において、Rhoからのシグナルを抑制することで、細胞接着、細胞運動に影響がみられた。活性酸素産生には影響がなかった。Rhoからのシグナルは、細胞の脱接着を誘導すると同時に、ミオシン軽鎖を通じて運動収縮力を誘導することを明らかにした。
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