サイトカインにより刺激を受けた好中球において、MAPキナーゼとPI-3キナーゼ、さらに、MAPキナーゼとセリンプロテアーゼがクロストークしていることを明らかにした。サイトカイン刺激による好中球のアクチンの再構築において、アクチン細胞骨格の重合が分解される(脱重合)されることを明らかにした。ERKおよびp38のリン酸化部位ではアクチンの脱重合が誘導されており、MAPキナーゼサブタイプが脱重合に重要な役割を果たしていることを明らかにした。このとき中心になってアクチンを脱重合させるタンパクがコフィリンであった。コフィリンの上流にあるタンパクであるRhoキナーゼ系の解析を行った。Rhoの下流にあるROCKの阻害剤の使用により、サイトカイン刺激した好中球が神経細胞のような異常な変形を示した。研究を進め、Rho-ROCK系がミオシン軽鎖を介して細胞の収縮力に、コフィリンを介して尾部の脱接着に関与していることを見い出した。また、走化性因子刺激においては細胞運動・脱接着のみならず活性酸素産生に関与していることを見い出した。共焦点レーザー顕微鏡、微分干渉顕微鏡、位相差顕微鏡による観察は、サイトカインにおける好中球の活発な細胞運動を示唆していた。好中球がサイトカインに反応して、それぞれのサイトカインに特徴的な細胞運動を行ない、これらの細胞運動がERK及びp38によってそれぞれ特異的な制御を受けていることを見い出した。さらに、好中球に主として特異的に発現しているSTAT3γは、細胞質顆粒由来のセリンプロテアーゼによってSTAT3αが限定的に分解にされることによって生じることを明らかにした。また、造血幹細胞は分化することにより、様々な血球細胞が形成されるが、遺伝子Meis1のノックアウトマウスを作成し、その機能が造血幹細胞の分化に必須のであることを明らかにした。
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