今年度は、治療ストラテジー開発の準備段階として、以下の研究を行った。 1)治療に用いる向精神薬選択基準の一つとなるTemperament and Character Inventory(TCI)を内因性精神疾患に施行し、疾患毎の特徴を抽出した。その結果内因性うつ病患者では、正常群に比して損害回避性尺度得点が有意に高く、新奇希求性尺度が有意に低いこと、また他の抑うつ状態を呈する疾患(適応障害、人格障害など)とは自己志向尺度、協調尺度の得点の違いで鑑別が可能となることが新たに本研究で見出された。一方統合失調症では、幻覚・妄想など陽性症状が強い群では自己超越尺度の得点が有意に高く、陰性症状が主体の群では損害回避性尺度の得点が高くなり、うつ病のプロフィールに類似することが新たに見出された。これらの結果は平成15年10月に開催された茨城精神科集団会、ならびに日本精神科診断学会において発表した。 2)治療上問題となる副作用発現を定量的に検討するため、向精神薬全般に適応しうる副作用尺度として新たに向精神薬副作用評価面接(SEEP)を開発した。現在本尺度の妥当性、信頼性につき検討している。 3)既知の遺伝子多型と治療効果や副作用発現などとの相関をみるため、内因性疾患患者群よりinformed consentを得て血液sampleを臨床データと同時に収集している。臨床データはデータベース化しており、現在までに内因性うつ病、統合失調症とも50例以上収集できている。血液サンプルの収集数は現時点では20-30例程度であり、さらに収集が必要である。次年度は相当数収集ができた時点で遺伝子解析を開始し、各種遺伝子多型と治療効果との相関を見ていく。 4)TCI得点分布によって治療薬を選択する前向き研究を開始しているが、未だ症例数が少なく、結果の解釈には至っていない。
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