研究概要 |
はじめに:高齢発症のうつ病は動脈硬化の危険因子が大きく、magnetic resonance imaging(MRI)で白質高信号が有意に多いといった血管性因子の関与が指摘されている。また、うつ病においては機能的前頭葉低活性(hypofrontality)が機能的脳画像において報告されている。今回我々は、高齢うつ病のhypofrontalityが血管反応性の低下によるものを反映している可能性があるという仮説を立て、それを検証するための研究を行った。 対象と方法:対象は高齢発症うつ病患者10例(62.2±4.89歳)および年齢・性・動脈硬化危険因子が一致した健常対照者10例(58.7±5.83歳)である。うつ病患者は全員寛解していた。1.5TMRIを用いmodified-Fazekasスケールにて白質高信号を評価した。近赤外ネペクトロスコピー(NIRS)はHitachi MedicalのETG-100を用し両側前頭部に装着し、酸素化ヘモグロビン(OxyHb)、脱酸素化ヘモグロビン(DeoxyHb)を測定した。認知課題は語流暢課題(VFT)およびその対象課題を3回ずつ行った。生理課題には二酸化炭素混合ガス吸入(CO2 5%,O2 21%,N2 74%)を行った。今回の研究は東京大学医学部、理化学研究所、JR東京総合病院のそれぞれの研究倫理審査委員会の承認を得ている。 結果と考察:VFTの産生数はうつ病群、健常群で有意差はみられなかったが、認知課題中のOxyHb、DeoxyHbはうつ病群が健常群と比較し有意に変化が小さかった。.一方、MRIの評価は両群で有意差がみられなかったが、CO2吸入では、DeoxyHbでうつ病群が有意に変化が小さかった。これらの結果から、寛解した高齢発症のうつ病におけるhypofrontalityは潜在的な動脈硬化の影響を受けている可能性があることが示唆された。
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