選択的セロトニン再取込み阻害薬paroxetine(PAX)によるうつ病治療の反応性や副作用による脱落例と関連する薬理遺伝学的な特性を調べるために、(1)PAXの臨床効果に5-HTTLPRの1・s多型が及ぼす影響、(2)副作用出現に5HTTLPRの1・s多型の及ぼす影響について検討した。(1)では、PAXを2週以上服用中のうつ病患者14名を対象に、PAX開始時、2週後、3-4週後、5-8週後の時点にHamilton rating scale for depression(HAM-D)により症状評価を行った。(2)では、PAXを2週以上服用中のうつ病患者57名の診療録記載から副作用の有無を後向きに調査した。PAXの血漿中濃度はHPLCにて定量し、末梢血からDNAを抽出し、5-HTTLPRの1・s多型をHeilisら(1996)の方法に基づきPCR法で検出した。本研究は、滋賀医科大学倫理委員会の承認を受け、趣旨を説明の上、同意が得られた患者を対象とした。(1)の結果、5-HTTLPRの1/s遺伝子型(n=5)、s/s遺伝子型(n=9)の両群で、PAX投与後HAM-D評価点は開始時に比べ改善を示したが、両遺伝子型群間で各時点でのHAM-D評価点、HAM-D改善率に有意差は認められなかった。(2)の結果、PAXで治療中に何らかの副作用を認めた群(24名)と副作用なしの群(33名)の群間で、性別、年齢、体重、また、PAX1日用量、PAX血漿中濃度、1 allele保有頻度を比較したところ、有意差は認められなかった。
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